耳鳴りの治療法:役立つもの、役立たないもの
耳鳴りを治す方法はまだありませんが、耳鳴りを気になりにくくし、つらさを和らげる方法はいくつかあります。もっとも強い根拠があるのは認知行動療法で、難聴もある場合には補聴器が推奨されています。そして、わかりやすい説明を受けることがすべての出発点になります。ガイドラインは、耳鳴りそのものに対する薬やサプリメントをすすめていません。
このガイドは一般的な情報であり、医学的な助言ではありません。耳鳴りが新しく始まった、片耳だけに聞こえる、脈打つように聞こえる、または難聴やめまいを伴う場合は、医療機関を受診してください。
耳鳴りは治りますか?
今のところは治りません。耳鳴りそのものを治す方法はなく、耳鳴りの治療薬として承認された薬もありません[1]。耳あかやあごの関節の不調など、はっきりした原因がある場合は、その原因に対処することで音が消えたり、大きく軽くなったりすることがあります[1]。
続いている耳鳴りについては、耳鳴りを気になりにくくし、それによる苦痛を軽くすることが治療の目標になります。英国のガイドラインは医療者に対して、さまざまな対処法によって多くの人が耳鳴りとうまく付き合いながら暮らしていると説明するよう求めています[2]。
もっとも根拠のある治療は何ですか?
認知行動療法(CBT)
認知行動療法は、あらゆる方法のなかでもっとも確かな根拠があります。成人2,733人を対象とした28件の試験をまとめた2020年のコクランレビューでは、認知行動療法は治療なしと比べて耳鳴りが生活の質に与える影響を軽くする可能性があり、聴覚ケア中心の対応よりもおそらく大きく軽くすることがわかりました[3]。米国のガイドラインは長く続いてつらい耳鳴りに認知行動療法を推奨し[4]、英国のガイドラインはデジタルの認知行動療法から始める段階的な方法を示し[2]、ドイツのガイドラインは行動療法を強く推奨しています[5]。しくみについては耳鳴りの認知行動療法のガイドで説明しています。
補聴器(難聴もある場合)
耳鳴りのある人の多くはある程度の難聴を伴っており、補聴器はそうした人にとって主な選択肢のひとつです[1]。NICE は、難聴がコミュニケーションに支障をきたしている場合は補聴器を提案し、支障がない場合も検討し、難聴のない耳鳴りの人には提案しないよう推奨しています[2]。ドイツのガイドラインも、難聴を伴う慢性耳鳴りに補聴器を推奨しています[5]。
ただし、それを支える研究は思いのほか少ないのが実情です。コクランレビューで条件に合った試験は1件だけで、91人を対象に補聴器と音響発生器を比べたものでした。どちらのグループも改善し、両者に差はありませんでした[6]。詳しくは耳鳴りと補聴器のガイドで説明しています。
説明とカウンセリング
耳鳴りについて理解すること自体が、治療のひとつです。耳鳴りが重い病気と関係していることはまれだと知るだけで、不安が和らぐことがあります[1]。NICE は、耳鳴りを悪化させるもの、安全な聞き方、セルフケアの方法などについて、診療のどの段階でも情報を提供するよう推奨しており[2]、ドイツのガイドラインは、カウンセリングを慢性耳鳴りの治療の土台と位置づけています[5]。
音響療法:根拠が限られた選択肢
環境音を心地よく感じる人は多いものの、コクランレビューでは、音を出す機器が、機器なしや説明のみより効果が高いという根拠は見つかりませんでした[7]。ガイドラインの見解も分かれています。米国のガイドラインは選択肢のひとつとして挙げ[4]、NICE は推奨するともしないとも判断できず[2]、ドイツのガイドラインは治療として使わないよう勧めています[5]。音響療法のガイドをご覧ください。
TRT(耳鳴再訓練療法)
TRT は、カウンセリングと音響療法を組み合わせて、脳が耳鳴りを聞き流せるようにすることを目指す方法です。英国の NHS は、すべての人に効果があるかどうかははっきりしないとしています[8]。ドイツのガイドラインは、弱い根拠にもとづき、TRT を少なくとも12か月にわたる長期的な方法として検討してよいとしていますが、装用型のノイズ発生器を加えても効果は上乗せされないとしています[5]。試験の結果はTRT のガイドで紹介しています。
睡眠、不安、気分の落ち込みへのケア
不安、うつ、睡眠不足など、耳鳴りに伴いやすい問題は、それ自体として評価し、必要に応じて薬も使いながら治療すべきです[5, 2]。耳鳴りと睡眠、耳鳴りとストレス・不安のガイドもご覧ください。
ガイドラインがすすめていないものは何ですか?
- 耳鳴りそのものに対する薬。ドイツのガイドラインは、効果が証明された薬がなく、なかには重い副作用があるものもあるため、慢性耳鳴りに薬を処方しないよう強く勧めています[5]。NICE は耳鳴りにベタヒスチンを提案すべきではないとし[2]、米国のガイドラインは、抗うつ薬、抗けいれん薬、抗不安薬、耳への注入薬を通常の治療として使わないよう勧めています[4]。うつ、不安、睡眠の問題に対する薬は、また別の問題です[5, 1]。
- サプリメント。米国のガイドラインは、耳鳴りに対してイチョウ葉エキス、メラトニン、亜鉛などのサプリメントを使わないよう推奨しており[4]、ドイツのガイドラインも使わないよう強く勧めています[5]。それぞれについてはサプリメントのガイドで取り上げています。
- 磁気や電気による脳への刺激。米国のガイドラインは、経頭蓋磁気刺激(rTMS)を通常の治療として使わないよう推奨しており[4]、ドイツのガイドラインは、rTMS に加えて経頭蓋電気刺激や低出力レーザー治療も使わないよう勧めています[5]。NICE は診療での推奨を出さず、さらなる研究が必要だとしています[2]。
- 鍼治療。ドイツのガイドラインは慢性耳鳴りに対して使わないよう勧めています[5]。米国のガイドラインは、推奨するともしないともしていません[4]。
突発性難聴は別です。耳鳴りとともに、3日以内に生じた難聴がある場合は、24時間以内に診察を受けてください[2]。突発性難聴は治療の方法が異なり、通常はステロイドが使われるからです[5]。
耳鼻咽喉科や聴覚の専門家に相談すべきなのはどんなときですか?
NICE は耳鳴りのあるすべての人に聴力の評価を提案するよう推奨しており[2]、米国のガイドラインは、耳鳴りが片耳だけの場合、6か月以上続いている場合、聴こえの問題を伴う場合には、速やかに詳しい聴力検査を行うよう求めています[4]。次のような場合は、かかりつけ医に紹介を頼むか、耳鼻咽喉科を受診してください。
- 医療者に最初に相談したあとも、耳鳴りが気になる[2]
- 最初の支援のあとも、耳鳴りが気分や毎日の生活に影響している。NICE はこの場合、2週間以内に診察を受けるよう勧めています[2]
- 片耳だけに聞こえる、または片側の聴こえが悪い[2, 4]
- 脈拍に合わせて鳴っている。急ぎで予約を取ってください[8]。拍動性耳鳴のガイドもご覧ください
- 数日から数週間のうちに聴こえが悪くなっている[2]
頭を打ったあとに耳鳴りが始まった場合や、突然の難聴、顔の力が入らない、ぐるぐる回るようなめまいを伴う場合は、すぐに助けを求めてください[8]。注意すべきサインの一覧は、耳鳴りとは何かのガイドにまとめています。
新しい治療法のうたい文句は、どう判断すればよいですか?
ビタミン、ハーブのエキス、サプリメントは、耳鳴りが治るものとして宣伝されることがよくありますが、効果が証明されたものはありません[1]。耳鳴りを完全に消すとうたうものには注意し、どんな研究が裏付けになっているのかを確かめ、お金を払う前に医師や聴覚の専門家に相談してください。
関連するガイド
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出典
- National Institute on Deafness and Other Communication Disorders (NIDCD), NIH. Tinnitus. 2023.
- National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Tinnitus: assessment and management (NG155), Recommendations. NICE guideline, 2020.
- Fuller T, Cima R, Langguth B, et al. Cognitive behavioural therapy for tinnitus. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2020.
- Tunkel DE, Bauer CA, Sun GH, et al. Clinical practice guideline: tinnitus. Otolaryngology, Head and Neck Surgery, 2014 (AAO-HNSF).
- Mazurek B, Hesse G, Sattel H, et al. S3 Guideline: Chronic Tinnitus. German Society for Otorhinolaryngology, Head and Neck Surgery (DGHNO-KHC). HNO, 2022. English version of the German AWMF guideline 017/064 (2021).
- Hoare DJ, Edmondson-Jones M, Sereda M, Akeroyd MA, Hall D. Amplification with hearing aids for patients with tinnitus and co-existing hearing loss. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2014.
- Sereda M, Xia J, El Refaie A, et al. Sound therapy (using amplification devices and/or sound generators) for tinnitus. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2018.
- NHS. Tinnitus. NHS website, 2024.