耳鳴りと睡眠:根拠にもとづく眠りのためのヒント
夜は部屋が静かでほかに聞こえる音が少ないため、耳鳴りが大きく感じられがちです。やわらかな環境音、規則正しい睡眠習慣、眠りについてあまり心配しすぎないことが、助けになる人もいます。睡眠の問題が続く場合は、不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)にもっとも強い根拠があります。
このガイドは一般的な情報であり、医学的な助言ではありません。耳鳴りが新しく始まった、片耳だけに聞こえる、脈打つように聞こえる、または難聴やめまいを伴う場合は、医療機関を受診してください。
なぜ夜になると耳鳴りがひどく感じるのですか?
静かな寝室では、耳鳴りと競い合うほかの音がほとんどありません。英国の NHS がまったくの静けさを避けるようすすめているのは、そのためでもあります[1]。心配も大きくかかわっています。眠れないことを心配すると、それが不眠を長引かせることがあります[2]。
耳鳴りのある人には、睡眠の問題がよく見られます。耳鳴りが睡眠や集中力に影響すると感じる人もいて[3]、耳鳴りのある人では、ない人よりも睡眠障害が多く見られます[4]。英国のガイドラインは医療者に対して、耳鳴りが睡眠に影響しているかを確認し、影響している場合は不眠重症度質問票(ISI)などの質問票の使用を検討するよう求めています[5]。
寝るときに音を流すと眠りやすくなりますか?
枕元の音響発生器やスマートフォンのアプリ、扇風機、小さな音のラジオなどで、雨音や波の音を流す人はたくさんいます。米国の NIDCD はこれらをリラックスや睡眠を助けるものとして紹介し、軽い耳鳴りなら、眠りにつくにはそれだけで十分な場合もあると述べています[3]。
音響療法についての研究は限られているので[6]、寝るときの音は治療ではなく、心地よさのためのものと考えるとよいでしょう。音量は小さく、心地よい範囲にしてください。根拠については音響療法のガイドで説明しています。
どんな睡眠習慣が役に立ちますか?
よく眠るための一般的なアドバイスは、耳鳴りのある人にもあてはまります[7]。
- 眠くなってから布団に入り、毎日同じ時刻に起きる。
- 寝る前の少なくとも1時間は、入浴や読書などでくつろぐ。
- 寝室を暗く、快適にする。
- 寝る前の少なくとも6時間は、お茶やコーヒー、お酒、たばこを避ける。
- 夜遅くにたくさん食べること、寝る直前に画面を見ることを避ける。
- 定期的に運動する。ただし寝る前の4時間は避ける。
- 昼寝をしない。よく眠れなかった翌朝も寝坊をしない。
NHS の耳鳴りのページでも、寝る前の決まった習慣を作ることや、カフェインを控えることがすすめられています[1]。英国の患者団体 Tinnitus UK は、睡眠は習慣と日課に大きく左右されると指摘しています[2]。
眠れないときはどうすればよいですか?
無理に眠ろうとしないでください。眠りについての心配が不眠を長引かせるため[2]、がんばって眠ろうとするより、気持ちが落ち着くことをするほうが役に立つことが多いです。ゆっくりした呼吸法は手軽な方法のひとつです。NHS は、横になったまま数分でできる、気持ちを落ち着かせる方法を紹介しています[8]。やり方はストレスと不安のガイドで説明しています。
不眠症の認知行動療法とは何ですか?耳鳴りにも役立ちますか?
不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)は、不眠を長引かせている考え方や習慣に働きかける、構造化された治療法です。英国では、かかりつけ医が対面や、オンラインのセルフヘルプ・プログラムで認知行動療法を提案することがあります[7]。
耳鳴りに関連した不眠のある102人を対象とした2023年のランダム化試験では、CBT-I は聴覚ケア中心の対応と比べて、治療直後にも6か月後にも、不眠をより軽くし、睡眠効率をより高めました。CBT-I のグループでは80%以上の人が臨床的に意味のある改善を報告したのに対し、聴覚ケア中心の対応では47%、睡眠サポートのグループでは20%でした。CBT-I は耳鳴りによる苦痛もより大きく軽くしました[9]。ひとつの試験の結果ではありますが、心強い結果です。
睡眠薬やメラトニンはどうですか?
米国の耳鳴りのガイドラインは、耳鳴りの治療としてメラトニンやほかのサプリメントを使わないよう推奨しています[10]。ドイツのガイドラインは、メラトニンについて、主に重い耳鳴りと不眠のある人で一定の効果を示した小規模な試験が3件あるとしたうえで、その結果は慎重に解釈すべきだとしています[4]。薬局で買える睡眠改善薬は1、2週間なら役立つことがありますが、それ以上は使わないほうがよく、使う前に医師に相談するのが望ましいとされています[7]。
睡眠のことで相談したほうがよいのはどんなときですか?
習慣を変えても良くならないとき、何か月もよく眠れていないとき、睡眠不足で毎日の生活がつらいときは、医師に相談してください[7]。耳鳴りが睡眠や集中力、気分に影響している場合も同じです[1]。
関連するガイド
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出典
- NHS. Tinnitus. NHS website, 2024.
- Tinnitus UK. Tinnitus and sleep disturbance.
- National Institute on Deafness and Other Communication Disorders (NIDCD), NIH. Tinnitus. 2023.
- Mazurek B, Hesse G, Sattel H, et al. S3 Guideline: Chronic Tinnitus. German Society for Otorhinolaryngology, Head and Neck Surgery (DGHNO-KHC). HNO, 2022. English version of the German AWMF guideline 017/064 (2021).
- National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Tinnitus: assessment and management (NG155), Recommendations. NICE guideline, 2020.
- Sereda M, Xia J, El Refaie A, et al. Sound therapy (using amplification devices and/or sound generators) for tinnitus. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2018.
- NHS. Insomnia. NHS website.
- NHS. Breathing exercises for stress. NHS website, 2026.
- Marks E, Hallsworth C, Vogt F, et al. Cognitive behavioural therapy for insomnia (CBTi) as a treatment for tinnitus-related insomnia: a randomised controlled trial. Cognitive Behaviour Therapy, 2023.
- Tunkel DE, Bauer CA, Sun GH, et al. Clinical practice guideline: tinnitus. Otolaryngology, Head and Neck Surgery, 2014 (AAO-HNSF).